新NISAの開始を機会に、つみたてNISAを止めて、一人勝手気ままな投資を始めて1年半程になります。
連日の日経平均最高値更新、アメリカ市場も記録更新の山を築く日々の中で、昨年は手持ちの株の含み益が増えると「うまくやれた!」と思っていたけど。今年になってからは違う、怖いなという気持ちが高まってきていて。
お勉強を進めつつ、株式市場の波に備えようとしているのですが。難しいしつまらない。
なので。息抜きにこちらを読みました!端的に言いまして超おすすめ!エンタメ感抜群でありつつ、教訓も得られる!けどマイケル・ルイスがスマートすぎて若者を死地(ウォール街)に駆り立てる作用もありそうな1冊です。
リーマンショック(世界金融危機)の震源になる「サブプライムローン」。
そのサブプライムローンにいずれ進化していくモーゲージ債産みの親たるソロモン・ブラザーズに新卒で就職したマイケル・ルイスがその中で見聞きした現場の人間や会社組織のあれこれを、彼の視点や同僚の証言も交えつつ書いたノンフィクションです。
当のマイケル・ルイスは3年程在籍の間に、社内で相当の成果を上げ、きっとこの会社にそのまま残っていればかなりの栄達をしたに違いないその、日々の生活の描写と、ソロモンブラザーズがモーゲージ債の媒介で急激に膨れ上がってぱちんとはじけるその模様がありありと書かれています。
彼が在籍したのはソロモンブラザースが膨れ上がった絶頂期から衰退に至る3年間。
とにかく、可笑しい。人物評があまりに可笑しい。この表現ができるのはほんと物書きの才能で。冒頭、ものすごい勢いで運が運を読んで時の寵児たるソロモンブラザーズに就職できた(たまたま、パーティでCEOの奥さんの隣の席に座ったのが始まり)と彼は言うのだが、きっと、パーティで同席したら「こいつやっばいわ。めっちゃおもろいし、頭切れ切れやん!ええ子見つけた!!!!」と感じたに違いないです。
奥さんのその時のマイケル・ルイスに出会った感想を聞いてみたい。絶対にそれはコネではない。事実、その時のソロモンは組織としての一貫性を完全に欠いていて、新人の獲得ルートに規定もなにもあったものじゃないし、とんでもなく面白い子みつけたわ!って感じで捩じ込まれたんだと思う。キチンと整ってしまった現代の優良企業にはないルートだろうけど。
本人は身を潜めて組織の流れに沿って、第三者的にソロモンブラザーズの内情を冷静に観察し続けているのだけど。彼が彼の異才ぶりを全く隠せていないのが可笑しいです。
まるでホワイトカラーのフリをしながら超原始的な男性集団。ルール無用のパワーゲームの蹴落とし合い、
儲けが莫大な間は部族のボス達(会社上層部)もそこそこ距離と折り合いをつけつつ、ソロモンブラザーズの枠の中で生きていたのが、取り分が減ってくると、儲けのつかみ合いと蹴落とし合いが始まり、下働きのトレーダーや他の社員の言質や動向といった現場の生の声を交えつつ、
マイケル・ルイスの愉快な筆致で生き生きと描かれています。
その後も何作もヒットを放っている、不動の大作家さんだと知ってはいたけど、マネーボールやマネーショートの原作者だとの知識はありつつ、原作を読もうと思ったことがなかった。
今は日本国民総投資推奨時代(年金減るから自分でなんとかできる人は努力して、預金を吐き出して経済を回して、代わりにちょっぴり税金には目をつぶるからと言う意図だと思ってる)、証券業界に蔓延する甘い誘惑と落とし穴の在りどころを思うと戦々恐々しつつ、僅かながらの原資をやりくりしている今日の私にはスマッシュヒットでした。
本人は、もうこんな世界嫌だ。
新卒のペーペーが何にもわかってないのに他人の何百万ドルというお金を右に左にとセールスして、相手のお客さんが職を失ったり、巨大な損を抱えるのを後目に手数料商売を続けることに辟易として、この業界を去ることを決め(とはいえ、文筆で食っていけるだけの目星があったんだと思われますが)、こんなク〇ッたれな業界に新たな若者が吸い寄せられないようにとの思いを込めてこの本を上梓したというのですが。
どうしてこうして。マイケル・ルイスの筆致が面白すぎるし、さらには胸が空くように勝利の階段を上っていく姿が描かれているので。
こういうゲームに参加して、一攫千金したいという若者の心を逆に刺激してしまうタイプの本だと思う。
酷い世界もあったもんだ、これはあかん。君子危うきに近寄らずで、債券相場などというものには手を出さないことだなと笑いながら読み終えるだけの距離感が私とウォール街の間にはあるのですが、
実際、このモーゲージ債を起点とした債権市場は2008年の金融危機にも根絶やしにされることなく、現在でもさらに複雑化されたうえで生き続けてるってのが・・・ウォール街がくしゃみをしたら私の身だって危ないのかもしれない。複雑に絡み合った金融の世界。
怖い怖い。
賢明なる投資家では1970年代にはリスク分散のため、景気の動向にあわせて資産を株と債券に分散投資せよと言ってるけど。こればっかりは時代が違うの一言だなと。
なけなしの小銭で投資をする身としては、債券の話はほんと、近寄らないが吉だと思えます。債権に半分入れるなんてしないで、市場の様子をみつつ、常に投資資金の半分くらい?グレアムのいう債権に預けるべき比率は普通預金でいいのだろうと思わずにはいられない。
賢明なる投資家 ウィザード・ブックシリーズ10 Kindle版 ベンジャミン・グレアム著
実態が把握できないものを売り買いする危うさを常に意識して。
引き続き勉強していく所存です。
息抜きしつつ、教訓は得たということで。息抜き本終了!
今週のお題「大発見」